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翌週末、速水は再度柳沢家を訪れる。遙からもお父さんも考えてくれていると聞いていたから、もう少し歩み寄れたらいいと考えていた。
「柳沢社長、会ってくださってありがとうございます。遙さんとの結婚についてーー」
「君の話は遙からも聞かせてもらった。私からも君に話したいことがある」
「はい…」
「まず、最初に君に謝らなくてはならないことがある。貴史が君に対してしたことについてだ。本当に申し訳ないことをした」
そう言って、頭を深々と下げた。
「柳沢社長、やめてください。そんな、社長のせいでは……」
「父である私にも責任がある。君も父親になればわかるだろう」
遙と速水は顔を見合わせる。
「お父さん、それじゃあ……」
「話は終わりまで聞きなさい。結婚の前に子どもができてしまうというのは、娘の父親の立場からすれば、相手の男に対して許しがたい気持ちになるものだ。それに、速水さんが遙を幸せにできるか保証なんてない。でも、遙がこの人とならどんな苦労があっても生きていけるというなら、それを信じてあげたいと思う。速水さん、遙のことをよろしくお願いします」
「柳沢社長、ありがとうございます。遙さんのことは大切にします」
速水の目にも涙が光っていた。
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