帰還

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 非常時の食料として小型の動物を飼いながら旅をする者は多い。特殊な訓練をし、仲間との通信に使役する鳥を旅に同行させている者もまれにいた。また、特別な意味はなくただ愛玩用に小型の生き物を連れている旅人もいる。なので、ジュセウスの肩で身を丸くしていた生き物のことはまるで気に留めていなかった。その翼を見るまでは。 「バプテスト様、先に申し上げなかったことをお許し下さい。でも、ジェーンが師匠を認めたからにはすべてお話します。でも、できればまずは王様にお会いしたいのですが、だめですか」  ジェーンの翼を見て動揺していたバプテストは、ジュセウスの言葉に冷静さを取り戻した。 「そうだな。では、こちらの話しから聞いてもらおうか」  ーー それは、ジュセウスがこの城を出てまもなくのことだった。  ジェイ・ユーダ姫の十八歳の誕生祝いの宴の真っ最中。空がにわかに曇ったと思った瞬間、侍従長のダイビルがその姿を恐ろしい魔物に変え、姫をさらって逃げたのである。 ーー  王の寝室で、ジュセウスは変わり果てたハロルド王の姿を見せられた。目の前で一人娘を浚われた時に魔物につけられた傷は、体も心も深くえぐり、王は正気をなくして床に臥せていた。  外にそんな状態が漏れると統治が危うくなる。  側近たちは臨時の体制をひき、姫が浚われたことも、王が病んでいることも伏せることにした。 「魔物がダイビルに化けたのか、もとからダイビルという人間はいなかったのか、何もわかっていないのだ。ただ、奴は北の方角へ飛び去った。幾人かの騎士が軍を引き連れて北へ向かった。しかし、みな、連絡が途絶えてしまった」 「どうか、ぼくに命じてください」 「ジュセウス」 「魔物が相手なら、姫をお救いするのは、ぼくとジェーンです」
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