旅立ち

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 王都から遠く離れたこの辺りには、警備の兵隊は常駐していなかった。蛮族の横行や魔物のせいで人が死に絶えた小さな村も少なからずある。  幸いにと言えるのかどうか、ビスレムの村は貧しすぎて、少なくとも盗賊の標的にはならずにすんでいた。  しかし、目当てが宝や農作物ではない魔物たちは襲ってくる。  魔物は昔からどこにでもいた。それは獣のように、あるいは疫病のように、または天災のように、良くも悪くもある程度の秩序をもって害をなしていた。たとえば、周期があったり季節があったり近づくと危険な場所があったりするのだ。なので、ある程度の対処ができていた。しかし、最近、魔物の災いが増していた。闇が深く広く大陸を侵食し始めているのだ。  ジュセウスが竜騎士を目指したのには、そんな背景があったのだ。大規模な魔物退治には竜の助力がどうしても必要であった。  野宿を重ねること半月。ジュセウスは、王都インスレンの門の前に辿り着いた。彼の運命が、この大陸全土を巻き込んで大きく動き始める幕開けの日だ。
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