王都

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 王から王宮騎士候補の証の青い三つ星の紋章入りの剣を授かり、城を出る直前には女官から王女お手製の守り袋を渡され、恩師らに見送られ、ジュセウスはインスレンを後にした。 「母さんとの約束は三年。もう一年近くを使ってしまったんだから、急がないといけないな。村のみんなにも心配をかけているだろうし」  そんな事を考えていて注意が疎かになっていたのだろう。王都からさほど離れていない、ちょうど人気の途絶えた林道で、いつのまにか七~八人の男たちに囲まれていた。 「王様から支度金をたんまりもらってるんだろう。俺たちにもちょっと分けてくれよ」 「いずれは国を守る王宮騎士の候補者とわかっていて襲っているんですね。あなた達に愛国心はないんですか」 「へん、愛国心だって、そんなもので腹を膨らませれるかってんだ。苦労知らずのお坊ちゃまが」  男たちは笑いながら剣を抜いた。彼らは、ジュセウルのまだ幼さの残った体つきと田舎生まれを感じさせない品のある顔だちから、親の権力や財で資格を得た貴族の子弟だと思っているのだ。  盗賊団の最初の一太刀がジュセウスを襲った。彼を見くびっている男は、全身隙だらけで正面から大きく刃を振り下してきた。 「うっ」  大男が苦痛のうめき声をあげて地面に転がった。他の男たちには何が起こったのかすらわからないほど、ジュセウスの動きはすばやく滑らかだった。 「油断するな。まんざら怠け者ってわけじゃなさそうだ」  そう言うが早いか二人目の男の長い剣が斬りかかってきた。長剣は、刀の長さの分だけ間合いがとれ、素人は便利な武器と思いがちだが、長さにまかせて振り回すと仲間の動きにも支障をきたすし、よほど素早く扱わないと自分自身の隙も多く出来てしまう扱いが難しい武器である。  目前の盗賊たちは、長剣の男が前進すると同時に一定の距離を取った位置に身を引き、各々の武器を構えた。二度、三度と振り回される長剣を、ジュセウスは鮮やかな動きでかわした。 「えーい、すばしっこい奴だ」  いきり立った男が大きく剣を振り上げた瞬間、腹部に出来た隙をジュセウスは見逃さなかった。二人目の男も倒れた。 「やめよう。もうこれ以上、戦うのはいやだ」  ジュセウスは剣を背の袋に収めた。 「あなた達も訓練所に居たことがあるんだね。みんなの動きを見たらわかるよ」  武器を構えて囲んでいた男たちへ、ジュセウスはまっすぐな視線を向けた。見かけからは想像のつかなかった剣さばきと裏腹に、幼い子どものようなまっすぐな瞳に、男たちは次の一手が繰りだせずに立ち尽くしてしまった。
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