王都

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 しばし、盗賊たちが、応える言葉を探すように互いの顔を見つめ合って佇んでいた。そこに、倒された二人のうめき声が聞こえてきた。  手当をしようと急いで駆け寄った若い男が、横たわっている男の服をはいで傷口を確かめようとして呟いた。 「切り傷が無い」 「鞘は抜かなかったから、出血するような傷はつけてないよ。でも、痣にはなるだろうから、冷やしてあげて」  ジュセウスは何でもない事のように言った。  法からはみ出した盗賊たちにも彼らなりの掟はあった。人の命を脅かすからには、いつ反撃をうけて殺されても仕方ないことと受け入れる。 「なんでだ。なんで剣を抜かないんだ。お前なら俺たちを殺すのなんか、わけなくできるだろう」 「何故?どうしてあなた達の命を取らなきゃいけないの」  男の疑問に、ジュセウスは心の底から理解できずに問い返した。  そして、そんな彼の言葉や仕種の一つ一つが、剣以上に盗賊たちの心を傷つけた。 「何不自由なく育った野郎に、俺らの気持ちなんかわかるわけねえか。金に恵まれ、才能にも恵まれてよ」  ジュセウスより少しだけ年が上らしい若者が、彼から目をそらしたまま呟いた。 「ぼくは、ビスレムで生まれ育った」 「ビスレム…、聞いたことねえな」 「うん、ずっと遠くの村だからね。土地は痩せ狩場も少ない貧しい小さい村だ。だから、少なくとも恵まれた生活はしてこなかったよ。剣の腕は父さん譲りかもしれないから、それは生まれつき恵まれているのかな。でも、その父さんに稽古をつけてもらえていたら、もっと強くなれたかもしれないから、やっぱり、そんなに恵まれていないと思うな」 「親父さん、どうして教えてくれなかったんだ」  いつしか盗賊たちは武器をおさめ、ジュセウスの話に耳を傾けていた。 「僕が生まれる前に、魔物と戦って死んでしまったんだ」 「俺の村も沼にも魔物が棲みついていたよ。俺の目の前で、まだ赤ん坊だった妹が喰われちまった」  みんなうなずいた。似たような体験をしてきているのだ。 「あ、さっきの答え、それかな。あなた達と戦う気はない。ぼくが倒すのは闇の魔物だ。そのために母さんを一人残して都にきたんだから。厳しい訓練を積むのも、知識を増やすのも、竜騎士になって、国中を飛び回って奴らを退治するためだから」
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