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 つつじまつり 2年2組 かみや さき子 ザザーンザバザバ    ピンクの海だ    赤むらさきのなみ    白いなみ    ピンクのなみ      なみがまあるくもりあがる 大きく大きくもりあがる    みんな、わらって    およいでる    つつじの海で    およいでる  初めてつつじまつりに行ったのは、小学2年生の時だった。  父の運転する車の窓から、公園の全景が見えた時、視界全部にピンクの色が広がった。そこは本当に、自分がいる場所と地続きだろうかと、目を疑いたくなるほどだった。 「おねえちゃん、きれいやね」  妹が目を輝かせて言う。  私には、それがおとぎの国の海のように見えた。  つつじの間を多くの人たちが歩いているのも見える。  私は前の年の夏に行った、海水浴のにぎわいを思い出した。 「みんながつつじの海の中で、泳いでるみたいや」 「さきはまた、おもしろいこと言うなあ」  父がおかしそうに笑った。 「ほんなら、水着も着んとあかんねえ」  母も話にのって、平泳ぎの真似までしていた。  会場に入り、つつじの中を歩いた。  つつじの木は思ったよりも大きく、私の背丈ほどあった。  丸く刈り込まれた木が、大波のように盛り上がって見えた。  私はピンクの波に圧倒されていた。  ザザーンザブーン  ザザーンザブーン  立ち止まり、ぼおっとしていた。
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