welcome to お江戸

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welcome to お江戸

ブン、と耳障りな音がして、壱真の視界は真っ暗になった。 天地の感覚を見失う暗闇の中、ぴょこっと小さな女の子が覗き込むように突然現れたから驚いてしまう。 「こんにちは、座敷わらしのサチ子だよ」 黒髪おかっぱで、丈の短い着物姿のちっちゃい女の子。 座敷わらしだと名乗られれば、納得しないでもない出で立ちだ。 幼い声音と愛嬌のよさで、可愛いことは可愛いのだけど、不本意にビビらされた分だけ距離を置きたかった。 なのに、元気いっぱいなサチ子は遠慮というものを学習してないらしく、壱真の心情なんてお構いなしに話しかけてくれる。 「今日は、あたしのおうちを案内してあげるね。ちちんぷいぷい、えい!」 ありきたりな呪文に合わせて腕を振ってみせる仕草は幼稚園児のお遊戯会レベルのぎこちなさなのに、しでかしてくれたことはとんでもなかった。 自分達のいる足元だけを丸く残して、辺り一面を宇宙に変幻させたのだ。 呼吸はできても、無量大数の星が浮かぶ果てのない空間に浮かんでいると、体の芯がくらくらしてくる。
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