暗殺依頼

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暗殺依頼

お江戸在住の傾城・明姫(あかるひめ)を暗殺してほしい。 そんな依頼が相馬家に飛び込んできたのは、壱真が小学校卒業を間近に控えた寒気が厳しい頃。 卒業式に着用するのが慣例となっている中学校の制服を早めに揃えて、ああだこうだと言っているような時期だった。 「社長、こんなものが届いていたのですが」 この物騒な案件は、壱真の祖父にあたる相馬 玄馬から展開していく。 「うん?」 玄馬は札幌にある経営コンサルタント会社の代表を現役で務めている傑物で、正孝の父親である秘書の和泉 正宗から一通の封書を受け取っていた。 手書きすら少なくなった昨今では珍しい毛筆の宛名書きながらも、料金分の切手にかぶせて消印が押されているので通常の郵便物の範囲内。 封筒が赤いので、仕分けする時にさぞ目立ったことだろうと感想が浮かべど、違和感といえばそれくらい。 気配り上手の正宗が時間外にわざわざ手渡しに来る辺りが、妙といえば妙だった。
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