14.雪おんな(6)

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(りゅう)は手を止め、拳を膝に置いた。 「…あら、先客でしたか」 音もなく戸があき、入ってきたのは女である。髪は束ねておらず、裸足だ。 「寒いですわね」 そのまま囲炉裏端に座った女の白い肌が、火を映して橙に染まる。(りゅう)は女に返事をした。 「寒いなら履き物をはいたらどうだ」 女はなにが可笑しいのか、ころころと笑う。その息は白くない。 「修験者さまは、お一人でしょうか。ご一緒しても宜しいかしら?」 「ああ」 (りゅう)は女を見て、にやりと笑う。 「ちょうど、雪女でもいいから相手をしてほしいと思っていたところだ」 ふふ、と女はまた笑ったが、今度は白い息が、粉雪のように舞い、床に溶けた。 だんだんと暗くなり、藍のことを考える。藍は、(りゅう)が父のことになると普段からは想像できないくらい動揺し、後先を考えない行動に出るのを知っているのだ。しかし、(りゅう)は落ち着いてかまをかけた。 目の前の女は、果たして自分から正体を言うだろうか。 囲炉裏の火が、またはぜた。 女は、顔を少し傾けて笑う。 「…昔、同じようなことを仰る修験者さまとお会いしました」 思わず(りゅう)は、腰を浮かせそうになる。しかしそのまま、続きを待った。 「そう言えばあなたは、その方に似ている…白髪とその目鼻立ち…はて、何年前のことやら」
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