9.後生の願い( 3 )

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9.後生の願い( 3 )

数日ののち、今までありがとうございました、と、拍子抜けするくらい短い挨拶とともに、凛は出ていった。 寝所に、これ幸いと狐の化生たちが押し寄せたが、九尾は人払いをして一人横になる。 九尾は、長として冷静に里を治めてきた。 だが、個の感情を押さえられるかは別だ。獣も人も、感情に突き動かされてしまうのを恐れて、理性で蓋をすることもある。 「全く、何百年も生きていてこれか」 九尾は自嘲した。 凛が好きだ。凛もそうだろう。しかし、今のままではいけないし、どうするのが最善なのか、もはやわからなかった。 理性を感情で覆すにも、九尾が重ねてきた年齢と経験が邪魔をしている。 「長生きなんて、するもんじゃないな」 凛が他の男のもとへ行ったら泣く、と自ら言ったが、娘が手元を離れた際に涙が出なかったのもまた、年を重ねてきたということなのだろうか。 逡巡し、答えは出ない。 九尾は、鮮やかな髪色と意思の強い目を思い浮かべた。
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