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「山に出たんですか?」
「いや、この手拭いは、村人が持ってきたのだ」
「村の猫が、化けるように?」
「それなんだよ」
大天狗も、眉間に皺を寄せている。
「そもそも、村でも見たことがない猫だそうだ。夜な夜な村の中を踊り狂う様がとにかく気味が悪いからなんとかしてくれと」
ははあ…と、九尾も顎に手をやる。
「こちらは、町に行った者から話を聞いたんですが、やはり手拭い片手に踊る猫が出た、と」
凛も懐から包みを取り出す。包んであるのは手拭いだが、それを取り出した胸元を上から覗きこみ、九尾が言った。
「相変わらず胸が無いな」
「放っておいて下さい」
「そこが平らだと着物には色々しまえるが、もっとあったほうが何かと便利だぞ」
「不便はありませんから」
「大きくしてやろうか」
「間に合ってます」
つれないな、と肩をすくめる優男を見て、大天狗は溜め息をついた。
「とにかく、うちの烏に村と町を巡回させる。何かあってからでは遅いからな」
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