9.後生の願い( 5 )

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「ううっ…」 嗚咽を漏らす夫を、凛はあきれ顔で見た。 「いい年して、本当にもう…」 「だってなあ…ううっ」 「どうせ私がいなくなったら、また他の女を囲うんでしょうに」 反論できずに黙る九尾だが、凛の眼差しは責めるものではなく、むしろ安堵しているようだ。 「九尾様」 静かに、お互い視線を交わす。 「私は(せい)に執着はありません。あなたと添い遂げるなんて無謀な望みも、そもそも抱いていません」 母が伸ばした手を握り、姫は両親の間で笑顔になる。 「いつになるかわからないけど、後生ではあなたと同じ時間を生きたい。短くても、儚くても、残された者が悲しみにとらわれないように」 猫が、踊る。 迎え火が町を、村を彩る。 それは、この世を去った者を想う未練の現れだ。 「あまり泣かれると、私が迷いますから。泣かないでくださいね」 凛は、笑った。 「後生の、お願いですよ」 後生の願い・了
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