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子供とも老人ともつかないような、小柄で痩せた体を伸ばして、妖怪は先ほどまで洗っていた小豆を、ざるごと川縁に置いた。
「いいか?俺は妖怪だ。小豆を洗ったり人を取って食ったり、とにかくちょっと怖い妖怪なんだ。お前も鬼なら、わかるだろ?」
んー、と、小鬼は首を傾げる。
「わかんない。俺、小豆も洗ったことないし、人取って食ったことも無いもん。お前、人食いのわりに痩せてるけど、どうやって食ってんの?」
「鬼なのに…人は食わないのか」
やや呆れたように小豆洗いは言い、自分より1尺ほど背の高い小鬼に向かって、やや芝居がかった調子で説明を始めた。
小豆洗いは、川によく現れる。
川の近くを通りかかった人間は、このなんとも言えない歌の節回しと、よく見えない姿に興味をひかれ、ふらふらと引き寄せられた挙げ句に川に落ちてしまう。
「…らしいんだよ、俺たち小豆洗いは、な」
最後の、なんとも曖昧で切なそうな語り口を聞いて、鬼は小豆洗いの顔を覗きこむ。
「らしいって、なんだよ」
「いや、俺も人取って食ったことないんだ…新参ものなんだよ、悪いか」
へえ、と鬼が面白そうに笑った。
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