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9.後生の願い( 5 )
盆の明けに送り火が焚かれると、町や村では不思議なことが起きていた。
神隠しにあった子供が、戻ってきたのだ。
泣いて喜び、天狗の山に報告へきた者の話によると、帰ってきた子供にはなんら怪我もひもじい様子もなく、ただ、にこやかに笑っていたという。
会えたよ。
突然いなくなった親しき人に。
流行り病で亡くなった家族に。
それは、我が子や近しいものを想い、盆の短いひとときを一緒に過ごしたいと願った、この世ならざる者たちだ。
別れも言えず去らなければならなかった想いを、迎え火の力を借りて伝えに来た。
短い再会の後、送り火が消える頃に未練は断ち切られ、子供たちは生者が暮らす日常へ帰されたのだ。
そして、踊る猫をその後見た者は、誰もいなかった。
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