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13.やきもち(2)
山の頂に程近い隠れ屋敷が、大天狗の住まいだ。
天狗たちがそこに到着したとき、すでに日は傾きかけていた。長が苛立ちを隠さない様子は珍しく、烏天狗は一歩下がり天狗の後ろに半身を隠した。
「遅いぞ」
「すみません」
大天狗は腕組みをしながら厳つい顔を息子である天狗たちに向けるが、天狗は表情を変えない。
「そんなに急用じゃないと思ったんで」
「思った、ってなあ…」
「母さんの烏が飛んでましたよ」
それを聞いて、大天狗が身を乗り出す。天狗は深々とため息をついた。
「今度は何なんですか」
「いや…ちょっと約束していた日に、たまたま九尾に誘われて呑んでたらつい朝帰りに…」
はあ、と天狗はさらに深いため息をつく。
「探しには行きませんよ。そのうち戻ってくるでしょう。浮気じゃないんだから母さんもいちいち怒らなくていいのに」
「いや、そこはまた藍ちゃんの可愛いところでもあってな…」
大天狗は、何か思い出したのか、にやにやしながら一人頷いており、天狗はそんな父に冷たい視線を向けた。
「息子に惚気ないで下さい」
「…母さんそっくりの顔で怒るなよ」
「親子なんだから仕方ないでしょう。しかもそれで文句言われるし…」
天狗は、彼女である烏天狗を見る。
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