4~7話

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4~7話

4話 踊り子  寝苦しい夜だ。クーラーをつけていても体に熱がこもっている感じがする。  寝室の明かりを消してからだいぶ経つが寝返りを繰り返すばかりで、まどろみはやってこない。  寝つけない理由は暑さだけではない。  部屋のカーテン越しに見える影だ。人型で手が4本あり、それが奇妙な形にぐねぐねと蠢く。  カーテンに背を向けても、揺れるカーテンのおかげで気配を感じた。気晴らしにスマホで音楽をかける。  カーテンが一際大きく揺れ、耳に吐息がかかった。体が固まる。  複数の手がべちゃべちゃとタオルケットを触る感触。荒い息に気圧されて無意識に音楽を切る。後ろの何者かの気配が消えた。  恐る恐る横目でカーテンを見ると二つの不気味な影がゆらゆらと揺れていた。 5話 上り坂  四つん這いの女がペタペタと上り坂から降りてきた。  血の道に手形を残しながら不自然に体をカクカクと揺らしている。  恐らく先週ここでひき逃げに合った女だろう。女は坂の中腹で方向転換して古い一軒家の塀まで這っていく。  ガリガリガリ。  表札の真下をはげた爪でひっかく女、これを夕方まで繰り返す。毎朝の光景だ。  私は女に気づかれないようにそっと民家に近づく。  そして、インターホンをゆっくりと押した。 6話 冷水    冷蔵庫を開ける。コップごと冷やしておいた水を飲んだ。  するとたくさんの人の話し声が聞こえた。  私は今自室で一人、しかしこの部屋には誰かがいるのだ。老若男女あらゆる声が憩ったり楽しんだり恨んできたりする。  冷水を飲んだ後、10分間だけの不思議な時間だ。  耳を澄ます。嫌な声が大半だが微かに紐が軋る音が聞こえた。  もう少しだ。もう少しで彼がなぜ死んだのか知ることができる。 7話 なすびライダー  お盆用に買ったなすびに足を刺しておいたら知らないおじさんがまたがってにこにこしていた。
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