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19~22話
19話 白い粉
近所に誰も通らない曰く付きの路地がある。
その路地にの真ん中にはチョークで引いたような白線が引いてあり、そこを越えると別の場所に飛ばされるというのだ。
私は路地に入る。反対側の道に出るには近道だ。
線の前まで歩いていくと一旦立ち止まり白い粉を足で掃ってそこを通る。
そして、持ってきた小瓶の中の白い粉を落とし線を綺麗に戻す。向こうの道まで安全に行ける、裏技だ。
路地を抜けるために再び歩き出すと後ろから若者たちの話し声がした。彼らも近道をするつもりだろう。
路地の出口で振り返る。誰もいなかった。
ちなみに白い線はチョークの粉ではない。
20話 カレー
今日の夕飯はカレーだ。材料を炒めて後は煮込むだけだ。
鍋を火にかけていると呼び鈴の音がした。
「くださいな」
男の声だ。私は小さ目な鍋にカレーを入れて玄関を開ける。
誰もいない廊下に鍋を置いて戸を閉めた。
「ありがとう」
扉越しにそれだけ聞こえた。月に何度かある怪奇現象だ。
男だったり女だったり子どもだったりする。翌朝には綺麗になった鍋が家の前に置かれている。
ついでに声を無視すると玄関が手の跡まみれになるので面倒だからカレーは毎回あげることにしているのだ。
怖いというより迷惑な霊なんだなと思う。
21話 蚊取り線香
蚊取り線香の臭いがする。家の中の蚊がポトポトと落ちた。
蚊取り線香なんて焚いてないのに。
22話 踏切
心霊スポットになっている踏切に来てみた。噂通り線路脇には花がたくさん供えられている。警報機が鳴り、轟音と共に電車が通る。
そして、その音より大きな悲鳴が上がった。
走り過ぎる電車の下からわらわらと亡者がわき出す。
線路から這い出てきたそれらは花束に群がり踏切の中に引き込んでいく。
踏切の中はたちまち花でいっぱいになりその慰霊花を亡者たちは奇声を発しながら踏みつける。
あまりに凄惨な光景に言葉を失う。思わず後ずさると後ろにあった何かを蹴った。
その音を聞いた亡者達が一斉にこちらを振り向いた。
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