44人が本棚に入れています
本棚に追加
目をそらす。
目をそらす。
目をそらす。
僕は一体、一日に何度彼女を見て、一日に何度彼女から目をそらしているのだろう。
放課後、弓道場に向かう彼女の背から目をそらし校舎を出て、そんなことを思いながら駅への道を歩いていると、
「ほんとだぜ。お前、見たいの?見たくないの?どっちなの?鬱陶しくて気持ち悪ぃな!」
突然背後で声がして、両手を握り合わせながら本当に飛び上がるほど驚いて振り返ると、
「驚き方も気持ち悪ぃな!お前。あはは、やっぱり俺が見えんのか。キてるぜ、だいぶヤバいぜ、お前」
野球帽を目深にかぶった小学校低学年ぐらいの少年が、僕を指差して笑っていた。
「…………」
なんだこいつ……。
気持ち悪いのはお前の方だろ、急に後ろに現れて急に人の心読んでるみたいなこと言って……。
こういうのは……無視だな。
なんかムカつくけどこんなもんに関わっちゃダメだ、さっさと帰ろう。
即断し無言のまま向き直って足早に駅へと向かうと、意外にも少年は追って来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!