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何だったんだ……マジで気持ち悪……怖……。
不快で不安な気持ちを打ち消すようにいつもの二倍速で歩き、いつもの一本前の電車に乗り、だいぶ早めに家に着き、
「ただいま」
と扉を開けると、
「おかえり」
目の前から、母親では無い、家族の誰かでも無い、しかし聞き覚えのある、子供っぽくもハスキーで鋭く胸の奥を刺さしてくるような声が即答した。
「うわぁーっ!?な……なんで……お前!?なんで僕んちに……!?」
驚きのあまり両手を握り合わせて後ろに倒れ込んでしまい、傘立てなどが倒れる大きな音が響き、
「ナオユキ!?帰ってきたの!?……どうしたの!?そんな所で転んだりして!?」
母親が駆け寄ってきたが、母親はそのすぐ隣で口元をニヤつかせている少年などまるで見えてもいないらしく、全く関心を示していなかった。
「あぁ、いや……!ゴ……ゴキブリが出たかと思ったけど……ち、違ったよ、大丈夫……ただいま」
認めたくは無い非現実的な何かがそこにいると確信し背筋に冷たいものを走らせながらも、急いで立ち上がり母と少年の横をすり抜けて自分の部屋に走り込み扉を閉めた。
が、
「転び方も気持ち悪ぃしダセえな、お前。だいたいゴキブリとはひどい言いようだぜ」
やはりそこには少年が待っていた。
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