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たとえば、何のためらいもなく、半分より少し多めに残ったストロベリーアイスのカップを差し出されたとき。何も考えてないのかな、と考えて、何も考えてないのだろうな、との結論にいたる。こっちも半分だけ残ったチョコレートアイスを差し出しながら、せつなさと、ほんの少しのかなしさが、胸の中にうずを巻く。
幼いときから、そんなことは何度もやってきた。真っ白な画用紙のように単純で純粋だったあの頃なら、こっちだって何のためらいもなかった。せつなさやかなしさなんて、もちろん感じたりしなかった。変わってしまったのは自分だ。――変わってしまったのは、自分だけだ。それを、いつも思い知らされる。
見上げなければならなくなった幼馴染は、手をつないで帰宅していた幼稚園の頃から、きっと、少しも変わっていない。
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