ご近所止まりの秘密の関係！

だから何だ！

「ぷはっー！」

プルタブを引く。缶を口につける。泡立ったアルコールが喉を通る。

たぶんこの三つの動作だけで、私は生涯幸せでいられるんじゃないか？

誰もいない１ＬＤＫルームのマンションで、須藤美奈子はそんなことを思った。

今年で２７歳。

だからなんだ。

旦那はもちろん、彼氏はいない。

だからなんだ。

だからなんだ、だからなんだ、だから……

「べつに結婚しなくたって人間生きていけるだろ！」

誰に言うわけでもなく、ダン！ とテーブルに缶を叩きつけると同時に叫んだ。

一緒に独身チームを結成していた高校からの由佳が先月結婚式を挙げた。しかも、ハワイで。

そしてその前の月は、同じく高校から友達の麻美が結婚式を挙げた。こちらは国内。

二〇代最初の頃に訪れていた結婚ブームが、ここにきてさらに牙とプレッシャーを尖らせてやってきている。

チラリと壁にかかったカレンダーを見ると、再来月には『乙葉の結婚式！』と書き込みがされている。

「……」

入籍報告や、結婚式の案内状が届く度に、「良かったじゃん！」とその時は大喜びできるのに、その日ベッドで一人眠ろうとすると急に寂しさに襲われる。

そして翌日には、そんなことも無かったかのように誤魔化して、ケロッとした顔で出社。ここ最近、そんなルーティーンが定期的にやってきている。