Number 7

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水面に浮き上がるみたいに意識が覚醒し、じわじわと目が開く。 「悪い。起こした?」 視線を横に向けると広瀬がいた。私の体にはペラ毛布ではあるものの3枚ほど重ねられており、お腹にはあたたかいものが乗っている。そっと触れてみると湯たんぽのようだ。 「……」 眠りに入る前と同じ白い天井をぼんやり眺めながら沈思黙考する。 「今……」 「ん?」 「夢……」 見ていた。 「広瀬が夢にいたよ……」 「俺? 何してた?」 「名前、呼ばれた」 結、って。やたら切ない声だった気がするが、なんで名前を呼ばれたんだったかと頭をひねる。 「上村さん下の名前なんだったっけ?」 「最悪でしょあんた……」 「呼ばれたいの? 名前」 「別に……」 朧げな暗闇の中で……あたたかく包まれていて……。 「あんたがなんか言おうとしてたんだけど……」 「なんだそれ? そんなことより具合どうなんだ?」 問いかけられ、夢を探る思考が途切れる。 「……あんま変わってないかも……」 「まだ30分しか経ってないしなー。一応体に良さそうなものも確保しといた」 ベッドから手が届く丸椅子に栄養ドリンクとスポーツドリンクとゼリーが乗っていて驚いた。こんなに気が利く男だったか? しかも、見事にどれもが私の好みの味やメーカーで。 「トリ登壇、頑張って」 心遣いに感動していたのに……満面の笑みにやれやれとなる。 「そんなに代打嫌だ……?」 「嫌だよ。やだやだ。15分ならまだしも40分コースなんて余計ムリ」 子供みたいな仕草でイヤイヤとゴネる。 倒れそうな私に気付いてわざわざここに連れてきてくれたこと、毛布や湯たんぽを持ってきてくれたこと、それから椅子の上のものたち。結局純粋な厚意ではなく私の代わりをやりたくないが故だったのだ。動機がなんだとしてもありがたいことにかわりはないが……。 「どうせ俺のジャケットしわしわですし」 「ぎゃー!?」 がばっと起き上がったが時すでに遅し。広瀬のスーツのジャケットは、私が着ながら寝ていたせいでしわになってしまっていた。 「ごめん! 考えが至らなかった!」 すぐさま脱ごうとするが止められる。 「あー脱がなくていい。後で返して。俺行くから、もう少し寝てれば?」
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