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くびれを通過した手のひらは下腹部も通過して太ももに触れる。
付け根から膝までを何度も行ったり来たり撫で、そのじれったい動きに唇を噛んでしまう。
しかしやっと内ももに手が及べば、反射的に閉ざしてしまうのだから、女はつくづくあまのじゃくだと思う。結局男の力で割られてしまえばさほど意味はない。
入口を探る彼の指が、トレジャーハンターのようにゆっくり慎重に私の体内に侵入していくのを見た。異物感よりも快感が先立ち、背中を弓なりにして息を漏らす。仕事ができる男は勘もいいのか。指先だけで駆け引きを行い、あっさりと私の弱点を炙りだして、くちゅくちゅと粘り強くなっていく音を静かに聞いている。
涙で滲む目を彼に向ける。いまいましいくらい涼しい顔でもしているのかと思えば、まったく余裕のない顔をしていて焦る。だから、なんで、そんな表情をするのか。
指が増えて圧迫感が拡がり一段と大きな嬌声をあげる。無だった場所に豊かな泉が生まれる。
「こんなふうになるんだ」
理知的な唇は、感慨深げに呟いた。
相変わらず指で粘膜をかきまわしながら、私の唇や耳、胸元を唇で襲う。特に鎖骨あたりは皮膚の下の血を吸う勢いで繰り返し吸われ、たくさんの痕が刻まれる。
絶対こんな関係になるはずがないと思っていた同僚との行為はある意味背徳感に満ちていて、官能は否が応でも高まる。そうして私の一番弱い耳に狙いを定めて、みだらな音を聞かせて情欲を煽りながら、一気に牙城を崩しにかかる。
意識を失いそうな怒涛の衝動が、脳天に向かって駆け抜けていく。
たまらなくなって彼に抱き着いて、私は叫ぶ。
「広瀬――……」
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