Count Down

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乗客が鈴生りになって降りていくのに、私は飛行機のシートに背中が接着されたみたいに動けなくなっていた。 ドッドッドッとこめかみあたりが脈打って、額にへんな汗が滲む。 宝井花という女性の個人ページに入った。相山建設……大地と同じ会社。生年月日から逆算する……23歳。 に、23歳? 6つ……いや、7つも年下だ。 彼女の日記を遡ると全員公開にしている中に、タグ付けこそされてないが大地が映っていて、後頭部を鉄パイプで殴られる衝撃を受ける。 なにこれ――? やめておけばいいのに、指を画面に這わしじっくりスクロールさせる。 【彼ぴっぴと神戸クルーズディナー♡】 【今日は夜景が見えるホテルでお泊りです♡】 【サプライズでお花をくれました、感動♡】 etc、etc……。 分かったこと。 私の恋人は、1年前から23歳の女の子と付き合っていた。私と付き合いながらこの子とも付き合っていた。 いてもたってもいられず大地に電話をする。数コール鳴ってやっと応答があった。 「何? 仕事中なんだけど」 聞き慣れた声は低く冷め切って温度がない。迷いもない。お前はもう他人なんだぞと一声で突きつけられ言葉に詰まる。 「……結婚したの?」 唾を飲み込み覚悟を決めて聞く。重く果てしない沈黙が訪れた。
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