20人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
3
翌日。
目が醒めると、時計は8時を指していた。
たぶん、朝の8時だ。
ドアを確認すると、やはり鍵が掛かったままだった。
微かに、となりの部屋から声が聞こえる。
たぶん、この部屋に押し込んだ、あの仮面の男の声だ。
「そうだ…だから…誘拐してやったのよ。仕方ないだろ!…他に方法が…」
という声が聞こえた。
かなり大声で喋ってるようだ。
誘拐?
「金には、確かに困ってるよ。…ああ、かなりな…」
金に困っている?
誘拐?
誘拐されたのか?
これは誘拐で、仮面の男は誘拐犯なのか?
だからこんな部屋に閉じ込められているのか。
何とか外に出たかった。
これだけ外の声が聞こえるということは、壁が薄いのかもしれない。
ということは、ドアの作りだって頑丈ではないのかもしれない…と不意に思った。
1時間ぐらいして、鍵が開けられ、仮面の男が部屋に入って来た。
手にはトレイを持っていて、床の上に黙ってそれを置いて、すぐに部屋を出て行った。
トレイの上には、ハンバーガーが二つほどとサラダとコーヒーが載っていた。
朝食ということか。
お腹が空いていたので、さっそく朝食を平らげた。
お腹は膨れたが、しばらくやることもなく過ごした。
だが、また部屋の外から音がした。
今度は話し声ではなく、ガサゴソした擦過音のような音だった。
何をしているのか?
しばらくの間、外の音はうるさく響いた。
そのうち、壁かドアを蹴るような激しく大きな音がした。
しばらくその激しい音は続いたが、いきなりドアがバン!と弾けるような響きと共に開いたので、かなり吃驚した。
仮面の男?
と思ったら、開いたドアの前に立っていたのは、なんと"あの子"だった。
あの子がどうして?
もはや訳が分からなかったが、あの子は急にこちらの手を引っ張って建物の出口に向かい、そのまま一緒に外に出た。
しばらく建物から離れようと、二人で走ったが、公園の近くまで来た時、いきなり一台の停車していた車が、こちらに猛スピードで突っ込んで来た。
あぶない!
向かって来る車を避けようと、身を翻した。
だがその時、車は目の前で急停止し、中からあの外人が飛び出して来て、泣きながらこちらを抱きしめた。
よく見ると、車は前に乗せられたベンツで、外人はこちらを抱きかかえて車の助手席に乗せ、そのままエンジンをふかして発進した。
気がつくと、あの子の姿は何処にもなかった。
車に乗らなかったのか?
振り向いて、車のリアガラス越しに後ろを見たが、あの子の姿は何処にも見えかった。
またあの子はいなくなった。
最初のコメントを投稿しよう!