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翌日。 目が醒めると、時計は8時を指していた。 たぶん、朝の8時だ。 ドアを確認すると、やはり鍵が掛かったままだった。 微かに、となりの部屋から声が聞こえる。 たぶん、この部屋に押し込んだ、あの仮面の男の声だ。 「そうだ…だから…誘拐してやったのよ。仕方ないだろ!…他に方法が…」 という声が聞こえた。 かなり大声で喋ってるようだ。 誘拐? 「金には、確かに困ってるよ。…ああ、かなりな…」 金に困っている? 誘拐? 誘拐されたのか? これは誘拐で、仮面の男は誘拐犯なのか? だからこんな部屋に閉じ込められているのか。 何とか外に出たかった。 これだけ外の声が聞こえるということは、壁が薄いのかもしれない。 ということは、ドアの作りだって頑丈ではないのかもしれない…と不意に思った。 1時間ぐらいして、鍵が開けられ、仮面の男が部屋に入って来た。 手にはトレイを持っていて、床の上に黙ってそれを置いて、すぐに部屋を出て行った。 トレイの上には、ハンバーガーが二つほどとサラダとコーヒーが載っていた。 朝食ということか。 お腹が空いていたので、さっそく朝食を平らげた。 お腹は膨れたが、しばらくやることもなく過ごした。 だが、また部屋の外から音がした。 今度は話し声ではなく、ガサゴソした擦過音のような音だった。 何をしているのか? しばらくの間、外の音はうるさく響いた。 そのうち、壁かドアを蹴るような激しく大きな音がした。 しばらくその激しい音は続いたが、いきなりドアがバン!と弾けるような響きと共に開いたので、かなり吃驚した。 仮面の男? と思ったら、開いたドアの前に立っていたのは、なんと"あの子"だった。 あの子がどうして? もはや訳が分からなかったが、あの子は急にこちらの手を引っ張って建物の出口に向かい、そのまま一緒に外に出た。 しばらく建物から離れようと、二人で走ったが、公園の近くまで来た時、いきなり一台の停車していた車が、こちらに猛スピードで突っ込んで来た。 あぶない! 向かって来る車を避けようと、身を翻した。 だがその時、車は目の前で急停止し、中からあの外人が飛び出して来て、泣きながらこちらを抱きしめた。 よく見ると、車は前に乗せられたベンツで、外人はこちらを抱きかかえて車の助手席に乗せ、そのままエンジンをふかして発進した。 気がつくと、あの子の姿は何処にもなかった。 車に乗らなかったのか? 振り向いて、車のリアガラス越しに後ろを見たが、あの子の姿は何処にも見えかった。 またあの子はいなくなった。
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