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今日もあの子と遊んだ。
名前も知らないあの子。
誠くんとあの子と、三人で。
スベリ台に乗り、
ブランコを三人で漕いだ。
楽しかった。
そこに未来ちゃんが加わった。
砂場へ行って、みんなでお城を作った。
泥だらけになり、水飲み場へ行って、手や足を洗った。
そこで誠くんが水をかけてきたので、こっちも水道の蛇口から水を出し、両手で掬って誠くんに水をかけ返すと、未来ちゃんも水をかけてきて、あの子も未来ちゃんに水をかけてみんなビショビショになった。
楽しかった。
みんな心の底からゲラゲラと笑い声を出して笑った。
本当に楽しかった。
日が高く、太陽の光が強烈なので、水でビショビショに濡れた服やズボンはすぐに乾いてしまった。
またみんなでブランコに乗った。
翌日。
あの子と二人で、また砂場で基地を作った。
未来ちゃんが来て、近くに穴を掘ったので、それを基地に通ずる地下道のようにした。
未来ちゃんは、穴を他にも幾つか掘ったので、すでに泥だらけになっていた。
みんなで作った、すでに1メートル80センチくらいの高さになった泥人形にそっくりだったので、みんなで笑った。
未来ちゃんもゲラゲラ笑って泥人形の真似をした。
それを見てあの子と一緒にまた笑った。
翌日。
あの子とドッチボールをした。
ボールを投げるとあの子が受け取った。
あの子がボールを投げてきたので、受け止めようとしたが、落としてしまった。
仕方なく、ドッチボールの円の外に出た。
円の外からボールを投げた。
そのボールをあの子が受け取り、またこちらまで遠投で投げ返してきた。
またボールを落としたが、円の外にいるのでそのままボールを拾って、投げ返した。
すると今度は、あの子がボールを落としたので、あの子はドッチボールの円の外に出た。
代わりに、こっちが円の中に戻った。
翌日。
あの子がいなかった。
どこを探してもいなかった。
グラウンドのブランコにも、スベリ台にも、砂場にも、自分の足で土を削って線を引き作ったドッチボールコートにも、誰もいなかった。
水飲み場にも行ったが、誰もいなかった。
あの子を探した。
あの子はいなかった。
あの子を探していることを人に告げると、
その人は言った。
あの子なんて、元々どこにもいない、と。
あの子が元々いない?
そんなことはないと否定したが、
その人は言った。
いいえ、あの子なんて元々どこにもいなかった、と。
たしかに今、あの子はいなかった。
グラウンドのブランコにも、スベリ台にも、砂場にも、自分の足で土を削って線を引き作ったドッチボールコートにも。
そして誰もいなかった。
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