隠れ家のBAR

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「楽しかったです。ありがとうございます」 歌い終えると、恩田はみそらに礼を言った。 「いいえ。こちらこそ、恩田さんに歌ってもらえて良かったです」 みそらはにっこりした。 「ありがとう。西洋に留学していた若い頃を思い出したよ。あの頃に行ったバーにここはとても似ている。また来ていいかな」 「ぜひまた来て下さい」 ありがとうと恩田は店をあとにした。 店を出ると満月が輝いていた。 「ミッシェル、君も元気にしているのかな」 恩田は熱くなった目頭を押さえた。 そして、笑顔になった。 楽しかったのと、自分の居場所を見つけれた喜びとで恩田の心は暖かだった。 足取りは軽く、杖を忘れたことも忘れていた。
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