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「いらっしゃいませ」
店内に入ると、先程の女性が笑顔でカウンターの向こう側に立っていた。意外と人で賑わっていてガヤガヤとしていた。
店内は木の作りで、黄色みがかった電球がより木の温もりを輝かせていて、恩田に懐かしさが込み上げてきた。
「ミッシェル……」
口からつい出てしまい、恩田はすみませんと女性に頭を下げた。
「私のバーにようこそ。ゆっくりしていって下さいな」
女性は恩田の言葉には気にせず、笑顔で恩田を座らせると温かいお茶を恩田に出した。
「ありがとうございます。実は、貴方に似ているミッシェルという人がいまして、ついてきてしまいました」
「そうだったのですか。ミッシェルでなくてすみません。私はみそらです」
みそらは残念そうな顔をした。
「みそらさん、少しでも夢見心地になれて良かったですよ。ありがとう」
「いえ。おじ様はお名前は?」
「恩田です」
「恩田さん、とてもしっかりした紳士に見えるのですが、何かされていたり?」
「昔声楽を」
「そうですか。では歌って下さいます?」
みそらが指した方にはギターやアコーディオンやマイクが置いてあった。
「私の歌で良ければ」
少しでも必要とされたのが嬉しい恩田は笑顔で答えた。
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