15人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は俯いたまま動かずにいると「虎太朗君?」という聞き慣れた声が聞こえてきた。
おずおずと目線だけ出すと「やっぱり虎太朗君だ」と安心したような声を出す史人さん。
俺なんかほっておけばいいのに…
「ごめんね、梨花ちゃん独り占めして」
別に梨花ちゃんなんてどうでもいい
「梨花ちゃん待ってるし、俺はもう帰るから」
やだ、帰らないで
「梨花ちゃんの所行こうよ」
「やだ」
二人の間に沈黙が流れる
その沈黙を破ったのは俺だった。
「梨花ちゃんと二人で回ればいいだろ」
俺と回ってよ
「俺はここで休憩して戻るから」
史人さんには行って欲しくない
「でてけよ」
我儘でごめん
またしばらく沈黙が流れた。
「ごめんね…僕はもう帰るよ。また連絡するから…」
ガラっとまた扉の音が響く。
窓越しに困った史人さんの顔が消えていった。
俺のバカ
最初のコメントを投稿しよう!