苦難

10/11
前へ
/39ページ
次へ
俺は俯いたまま動かずにいると「虎太朗君?」という聞き慣れた声が聞こえてきた。 おずおずと目線だけ出すと「やっぱり虎太朗君だ」と安心したような声を出す史人さん。 俺なんかほっておけばいいのに… 「ごめんね、梨花ちゃん独り占めして」 別に梨花ちゃんなんてどうでもいい 「梨花ちゃん待ってるし、俺はもう帰るから」 やだ、帰らないで 「梨花ちゃんの所行こうよ」 「やだ」 二人の間に沈黙が流れる その沈黙を破ったのは俺だった。 「梨花ちゃんと二人で回ればいいだろ」 俺と回ってよ 「俺はここで休憩して戻るから」 史人さんには行って欲しくない 「でてけよ」 我儘でごめん またしばらく沈黙が流れた。 「ごめんね…僕はもう帰るよ。また連絡するから…」 ガラっとまた扉の音が響く。 窓越しに困った史人さんの顔が消えていった。 俺のバカ
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加