果ての場所

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葉月「‥‥‥‥。」 私から話しかける言葉もなくついていくだけで 時間が流れる 紗愛「‥葉月さん。突然ごめんなさい 私、貴方に悪いことをしちゃったんじゃないかってずっと悩んでた だから謝りたくて‥ごめんなさい 私の勝手で決めつけて」 しょぼくれた顔と声が響いてきて、こちらまで顔をしかめそうになる 葉月「‥‥。気にしないで 私はもう落ち着いたのいいです それよりも、悩まないでくれませんか? 私が悪いみたいで嫌なんです」 私が痛みを覚えてるのに自分が痛いみたいに‥ 私が苦しんでいる痛みがわかるはずもないのに 痛そうにして 私が悪いわけじゃない。関わろうとする彼女が悪いんだ そうやって自分に何度言ってもモヤモヤは消えてくれない。 自分に関わる利益なんてないのにどうして私のためにここまでやろうとするのか 気になっているけど聞くのは怖い、そんな話 どうせ同じなら聞いてしまおうか 葉月「ねぇ、なんで紗愛さんは私にここまでするんですか?貴方はできるのに 私よりなんだって。皆にだってそう どうしてですか?」 私に関わる意味。それが意図的ならもう私はここから居なくなる でも本意だとするなら‥私は受け入れていいのだろうか 紗愛「それは考えすぎです。私は何だってできる訳じゃない‥。まだ何も ただ葉月さんにひどい顔をしてほしくなかった できることの喜びを知ってほしかったんです」 紗愛「できないのは苦しい、やっても変わらなかったのだとしたら尚更。 厚かましい話だったらごめんなさい さぁ、家につきました どうぞ上がってください」 こんなことを言われるとは思わなかった 眩しい言葉‥信じていいんだろうか 葉月「お邪魔します」 ペコリと頭を下げて家の中へと足を踏み入れる 紗愛「どうぞ‥ゆっくりしていってね 部屋はこちらに、手前の椅子にどうぞ」 通された部屋は女の子らしくてとても可愛かった 指示してもらった通りに椅子へと座ると彼女はゆっくりと社会のノートを取り出してきて 話し始めた 紗愛「今日は社会のノートが近いからいいかな?プリントはこっちにまとめておいたからゆっくり読んでね」 至れり尽くせりで本当にいいんだろうかと思い始める いつもは母が全てやってくれていたが紗愛さんは自分でやっていて、これが当たり前なんだろうか とても疑問だった 葉月「紗愛さんありがとう。私も酷いこと言ってごめんなさい。とても助かりました」 感謝の意を伝えるととても嬉しそうに彼女は微笑んでくれる 紗愛「私もずっと言いたいと思っていたんですがさん付けしなくても大丈夫ですよ もしよかったら私のことは紗愛って呼んでくれませんか?」 彼女からの突然の申し出に逆にドキドキしてしまって困惑が隠せなかった ここまで私の事を考えてくれるのだから意図的にしてるなんてこともないんだろう やっぱり信じてみても‥ 私の心は揺れていた 葉月「わかりました。頑張ってみます紗愛さん あっ、紗愛‥よろしくお願いします」 言ってみると心臓が恥ずかしくて跳ねた気がしたがとても暖かな気持ちだった 紗愛「ありがとう。私も葉月って呼ばせてください。よろしくお願いしますね じゃあ、まずは社会の世界史からかな」 葉月「えっと、どんな内容なんですか? なにも分からなくて」 戸惑いながら答えるとすぐに答えが返ってきて 紗愛「国の名前が主でした。後はプリントから出るらしいですよ。 世界史はとても面白い話をしてたんです 仕事も勉強もしなくても皆が不自由なく生きていた国が遥か昔にあったとか 私は見てみたかったと思っています 葉月さんはどう思いますか?」 唐突な彼女から来るとは思えなかった問いに言葉が出てこなくて少し間を開けて答えてみる 葉月「私はうらやましいと思います でもどうしようもないとも‥ 今は勉強も仕事も当たり前なので‥分からないです」 紗愛「そっか、そうだよね。今じゃあ、これが当たり前だもんね ありがとう答えてくれて」 ただそういったものの彼女の顔は笑ってはいなかった だからこそ私は聞いてみたくて口を開いた 葉月「あの、紗愛のお母さんは何処に? 体が悪いんですか? 姿が見えないので心配で」 顔色を伺って聞いてみると答えはすぐ帰ってきた 紗愛「私の母ですか?‥疲れているみたいで だから心配いらないですよ。いつもこんな感じだから」 その声音が知らないくらい冷たくて思わず身震いをする なんだか怖さを感じて終わりにしようと話を切り出す 葉月「あ、もうこんな時間。 これ以上遅くなると怒られちゃうから帰るね ありがとう紗愛‥。またね また誘うから、そのときはよろしくね」 私が慌てて言うと彼女は微笑んでくれる 紗愛「そっか、時間が立つのは早いね 今日はありがとう。またよろしくね 後で鍵は閉めるからそのままでいいよ 気をつけて」 私たちはそれからほぼ毎日のように勉強をやる ようになった 紗愛が恐ろしいと思ったのもその日以外全くなかった
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