プロローグ

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プロローグ

ーーーーーーーー 7月のジリジリとした日差しが照りつける公園の中の木陰にあるベンチに座り、私は本を読んでいた。 本といっても児童文学書だ、9歳になったばかりの私には、あまり難しい本は読めはしない。この本は各地の伝説に書かれた本で、比較的平仮名も多くて読みやすいからとお母さんに言われて、もらった本だ。すでに何度も繰り返し読んではいたけれど、今日もこうして、ここでこの本を読んでいた。 目の前では私と同じぐらいの子ども達が公園の中を所狭しと走り回っていた。 よくもまあ、この溶けるような日差しの中で走り回れるなとも思うが、きっと私とは身体のつくりが違うのだろう。 さて、今日はどの話を読もう。せっかくだし、今の季節に合ったものが良いと思って、ペラペラとページをめくり、私の好きなその話の冒頭を読み始めた時だった。 「なにしてるの?」 突然の声に顔を上げると、私と同じぐらいの歳の子が立っていた。背は、おそらく私より少し高いぐらいだろうか。黒髪のショートヘアで、鳥の形をした髪飾りをつけていた。 まったくもって、初めて見る顔ではあるのだが、初対面の子が私に一体なんの用だろう。 「本、よんでる」 とりあえず、私は本を持ちあげて見せ、質問に答える。 「おもしろい?」 「うん」 返答も少し面倒になって対応が雑になる。正直言って私は人と話すのが苦手だ。 「どんなお話?」 いつのまにか隣に座っていたその子が本を覗き込みながら言う。わりと図々しい子だ。 「この島に伝わるかささぎのでんせつの話。聞いたことある?」 「あっ、お母さんから聞いたことある!じゃくがんでんさつ?だっけ」 「たぶん、その話だよ」 知っているのなら、この話はそれで終わりだ。私は、視線を女の子から手元の本に移す。しかしながら、その女の子は私の隣にいたままで、私の顔を見続けていた。 「まだ、なにかあるの?」 「その話、聞きたいなって」 「聞いたことあるんでしょ?」 「うん、でも……聞きたいなって」 なんだか、話さなければ帰ってくれなさそうな雰囲気だ。思わずため息をつく。   「ちょっとだけ、長くなるけど」 「わかった!」 そう返事をして、その子はキラキラと目を輝かせて私が話し始めるのを待っていた。 まぁ、私も暇だから別に良いか。 私は本を、パタンと閉じて横に置いて、その子の方に顔を向けた。 「昔、ある所にね……」 私は、話し始める。この島に伝わる伝説の話を。 ーーーーーーーーーー
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