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僕は見てはいけないものを見た気がした。
だから、大人しく自分の部屋へ行く。
やだ・・・やだよ・・・葵お兄さん。
葵お兄さんは、僕のだ。
僕のだ。
僕はこの時初めて、独占欲というものを知った。
中学1年生の終わりだった。
父さんと母さんは仕事に出ていて・・・共働きだった。
だから、家には僕と、
兄さん達しか居なかった。
だからって・・・
僕は、
自分の部屋に入って、
声を殺して泣いた。
こんなの嘘だ・・・
信じない・・・
僕は、
この時初めて葵お兄さんを遠くに感じた。
僕は自分の部屋で声を殺して泣いた。
しばらくすると、
僕の部屋の扉をノックする音が聞こえた。
「静?入っていい?」
葵お兄さんだった。
優しい声が大好き。
サラサラの明るい髪の毛が大好き。
白く光る肌が大好き。
キレイで眩しい瞳が大好き。
「入るよ?」
葵お兄さんがドアを開けて入ってくる。
僕は、涙を止めて、
顔をゴシゴシ擦った。
「泣いてたの?どうしたの?何かあった?」
僕の傍まで近づいて、膝を折る。
僕の頭に手を置いてくれる。
温かい手・・・
「ううん。何も無いよ。ごめんね、心配させて。でも、大丈夫だから。」
「そう・・・?何かあったら、僕か薫に言うんだよ。」
「うん、ありがとう、お兄さん。」
そうして、僕は心に想いを閉じ込めた。
僕の恋は、知られてはいけない。
兄さんと、葵お兄さんのためだった。
でも・・・でも・・・僕は諦めきれない。
僕がもっと大きくなったら、そうしたら、もしかしたら葵お兄さんも僕のこと、見てくれるかも・・・
僕達は、
居間に移動して、お菓子を一緒に食べた。
石油ストーブを点けて、
温かくして・・・
今まで見たことも無かった二人の距離。
近い・・・ものすごく近かった。
あれは、僕が見た真昼の夢だったのかな?
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