白い覚醒

3/9
前へ
/52ページ
次へ
「紗英ちゃん・・・じゃあ貴子さんに・・・」 私の問いかけが耳に入っていないのか紗英ちゃんのお喋りは止まらない。 「ギプス固定が最低でも4週間なんだって、経過しだいでは後2週間くらい延長する事もあるみたい、外した後も暫くは大げさなサポーターが必要らしいの!」  「紗英ちゃ・・」 「あっでも今は足が腫れてるから緩めのギプスなんだよ。ちょっと不恰好だよね。来週にまた巻替えるから、その時はスマートでカッコ良くなると思うよ」 「ねえ、紗・・」 「どうしよう由香ちゃん、後遺症とか残るかな?そうしたら時々なら松葉杖を使っても全然OKだよね。だって痛いんだもんね。そしたら最高なんだけど」 紗英ちゃんは完全にハイになっていて、取り付く島がない。 何とか落ち着かせようと慌てて温かい紅茶を淹れた。 一息つくと紗英ちゃんは落ち着いたようにみえた。漸く私は改めて話を聞けた。  私と別れた後直ぐに貴子さんに骨折のことを懇願したらしい、30分ほど話をし紗英ちゃんが本気だと分かると、どこの部分をどの程度怪我したいのかを尋ねられた。 紗英ちゃんはなるべく長く松葉杖を使いたいと告げ、後遺症が残っても構わないとも言ったそうだ勿論希望は右足だった。 その後いかなる責任も自分で負います、絶対他人に漏らしませんという類の誓約書にサインをし、この部屋にはもう訪ねてきませんと約束もさせられた。 理由を尋ねると「だって傷害罪で捕まっちゃうでしょ」と言っていたそうだけど、聞いてみれば至極当然だ。 誓約書を書いて自ら希望したとはいえ他人を骨折させるのだから、慎重になって当然だと思う。 絶対他人に知られたくない秘密を抱えているメンバーを守るために警察沙汰は避けたいのだとも言っていたそうだ。 誓約書を書くとベッドに座るように指示されもう一度確認された。 「本当にいいのね」
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加