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「あなたそれフェイクでしょ」
突然掛けられた声に私は驚いて、思わず肩をすくませてしまった。
半呼吸をおいて恐る恐る振り向く。
「それ」
そこには柔らかな微笑を湛えた女性が佇んでいた。
軽く腕を組みながら、右の手首を返し私の腕を指さしている。
その意図をとっさに察した私は思わずその指の先にある左腕を右手で庇うように覆う、顔が熱くなる。
咄嗟に覆ったはずの左腕は包帯が指先までギッチリと巻かれ三角巾で吊られている。とてもじゃないけど私の華奢な手では隠しきれない。
(なんで?)
思わず下を向いて顔を真っ赤に染める。
ドクドクドク。
激しい鼓動が五月蝿いくらいに耳に入ってくる。
同時に心の奥にしまっていた裸の自分を見られているような恥ずかしさが込み上げてきた。
(恥ずかしい・・)
梅雨の最中、季節外れの真夏日にも関わらず流れる汗は冷たく体を凍らせる。
その女性は私の気持ちなんてとっくにお見通しという顔で話を続ける。
そのトーンはとても優しく、まるで年の離れた妹にでも話しかけるような響きがあり、妙に耳に入って来て疎ましくも懐かしくもあり不思議だった。
「まず三角巾の掛け方が逆。後ねその包帯は固定用じゃないわよ。100円ショップとかで買ったのかな?その固定用のダンボール?も薄すぎね」
完全に全てを見通されている・・・私の密かな趣味、とは言っても性癖の類なんだろうか?私は包帯姿で人前に出るのを何時の日からか自らの喜びにしていたのだった。
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