白い高揚

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興奮冷めやらぬまま紗英ちゃんにLINEを送り、その夜は一緒に食事をする約束をした。 数時間後。ネットで見つけた居酒屋で紗英ちゃんを待つ。 ここはイタリアで修業したシェフが腕を振るう、創作イタリアンが安価で味わえるお店で特に女性人気が高いらしい。 加えて個室のテーブル席が多く、松葉杖でも不便は少ないだろうと思ったのだ。 席に案内されタッチパネルのメニューを眺めていると直ぐに紗英ちゃんの声がした。 そのテンションはいつもより高い。 「どうしたの?ユカちゃん別人みたい!いい!いいよ。凄く似合ってる!あたしとお揃いだね」 紗英ちゃんは凄く褒めてくれるけど、トーンが低めのブルー系でマッシュなショートカットの紗英ちゃんと比べると、イメチェンと言いながらも無難にまとめた私とはかなり印象が違う。 紗英ちゃんは興奮した様子でその後も矢継ぎ早に話しかけてきた。 「そのギプス!!とうとうユカちゃんも骨折したのね。どれくらい掛かるの?私も今日やっとギプスになったの、同じ日にギプスになるなんて素敵!」 足のギプスをコンコンと叩きながら嬉しそうに話し続ける。 テーブルの下を除くと靴の代わりに汚れ防止の青色の簡易的なカバーが被せてあった。 (あっこういう、いかにも病院で貰いましたって感じのやついいな) 私は思わず、変なことを考えてしまった。 いつも地味な私に紗英ちゃんはもっとオシャレしないとダメだとアドバイスをしてくれていたので、イメチェンをした姿を見て本当に嬉しいようだ。 そこにきて私の骨折。 2人とも仲間意識の高まりと共に心の絆が深くなっていくのを感じていた。 その後は2時間ほど談笑を続けたけど、流石に怪我をしたばかりの患部は激しい痛みを訴える。 それに我慢できなくなって、この日はいつもよりも早めの解散になった。
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