白い破壊

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「はぁはぁ・・紗英・・ちゃ・・んっ・・ありがとう・・・」 冷蔵庫の中に保存してあったロキソニンを紗英ちゃんに持ってきてもらって飲ませて貰うと、多少は痛みが和らいだ気がした。  「由香ちゃん、あたし明日会社を休むね。一緒に病院に行こう」 「ぐっ・・紗英ちゃん・・大丈夫よ。ぐうっんっ!一人で行けるわ・・松葉杖の女の子と一緒に行ったらさすがに・・いっつっ・・あや・・・怪しまれるかもしれない・・・」 「でも・・・」 「大丈夫よ、ありが・・・とう今日はもう帰ったほうがいい・・・わ・・」 私は無理やり笑いを作り紗英ちゃんを送り出した。 (ああ、なんて馬鹿なことをやってしまったんだろう) (会社どうしよう) (痛い痛い痛い痛い痛い) (とうとうやった、これで両腕ともギプスだ) (でも、痛い、手術とかになるのかな?) その夜は激痛と後悔と達成感が交互に襲って来て完全にパニック状態になっていた。 枕を噛みながらそれに耐え結局一睡も出来なかった。 痛みで歩くことも辛かったのでタクシーを呼び整形外科に朝一番で向かった。 脂汗を流し真っ青な顔で苦痛に喘ぐ私を見るなり看護師さんは慌てて車椅子を持って来てくれた。 「ギプスが短くなったの・・・で、自転車で買い物に出たら・・・転んでしまったんです・・・・」 レントゲンを見て難しい顔をしている初老の先生に私はそれだけをなんとか説明した。 「う~ん。重症だよ、ほら黒い線が見えるよね。ココとココと後ココね。検査しないと分からないけど靭帯も切れているかも知れないよ。今は上手く嵌ってるみたいだけど亜脱臼した形跡もあるね」 先生に言われるまでもなく、レントゲンの黒い線は私にも解るほどにハッキリとしていた。 患部が色々あり過ぎて結局先生は複雑骨折だと簡単に言うに留めた。
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