白い光景

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実際一緒に暮らしてみると、紗英ちゃんは本当にいい娘だった。 もともとが世話好きだったらしく、私の身の回りの一切を明るくこなしてくれている。 1週間はお風呂に入れない私の体を、紗英ちゃんはお湯で濡らしたタオルで拭いてくれた。 毎日会社に行く前には一日分の食事も用意してくれる。両腕が使えない私の為に、おにぎりやサンドウィッチ等の道具を使わなくても食べられる物を作ってくれた。 とは言えギプスとシーネで両腕を拘束されている私の食事の様は、とても人に見せられる物ではないのだけれど・・・。 「よしっと、それじゃあ由香ちゃん横になって 」 「・・うん」 ニコニコと笑いながら、いつもの用意を済ませた紗英ちゃんに促され横になる。 両腕が使えないと、ただそれだけの動作にも時間が掛かかってしまうけど、私が横になるまで紗英ちゃんは笑いながら待ってる。 「由香ちゃん、腰を上げて」 「・・・うん 」 「由香ちゃん、あたしよりお姉さんなのに赤ちゃんみたい」 「やだ・・恥ずかしい」 「ううん、由香ちゃん凄くかわいいよ。ずっとずっと世話してあげたいもん」 「やだもう」 「えっへへー、本気だもん」 用意をしていたオムツを私にあてながらコロコロと紗英ちゃんは笑う。 5日目ともなるとかなり手際がいい、私はまだ少し恥ずかしさが残っていたけど、同時に震えるような幸せ味わっていた。 「じゃあ、行ってくるね。今日でこのギプスともお別れしなきゃ・・行ってきまーす」 「行ってらっしゃい」 一月以上巻かれていた足のギプスは、今日からサポーターに変わるらしい。 私はギプスを外すために午後休をとった紗英ちゃんが、いつもより早く帰ってくるので嬉しかった。
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