白い光景

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「ただいまー」 帰ってきた紗英ちゃんの足にはギプスの代わりにサポーターが装着され、松葉杖はまだついていた。 ベージュ色のそれは私の想像よりも大げさで、足首の両側にプレートが入っていて、更にストラップをクロスさせて留めるというサポーターというよりも医療装具に近いように思えた。 細い足首が、その仰々しさをより強調させている。 想像より大げさなサポーターだったのが嬉しかったらしく、紗英ちゃんは機嫌が良かった。 松葉杖は医者にはもう使わなくてもいいと言われたらしいけど、紗英ちゃんは痛いを連発して後1週間ほど使う予定らしい。 「えへへ、いいものゲットしちゃった」 ブランド物のバッグではなく、医療用の装具を手に入れて紗英ちゃんはとても嬉しそうだ、私もその様子をみて少し羨ましくなった。 「いいなぁ肘とか手首もカッコいいサポーターってあるのかな?」 「大丈夫だよ。多分カッコいいのがあると思うよ」 「だったら黒いがいいな、カッコいいもんね」 「えー、由香ちゃんはベージュの方がケガ人ぽくて良いと思う」 「だったら紗英ちゃんの方が黒が似合うよね、スポーティーだし」 「そっかな、だったらネットで探してみようかな?」 私と紗英ちゃんは早速サポーターを検索し、こっちの方がスマート、ごつい方がカッコいい、ゴチャゴチャしてて嫌だなんて言いながら何時間もはしゃいだ。 恐らくこの感情は同世代の女子達には理解できないだろうと思いながら。
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