白い光景

4/5
前へ
/52ページ
次へ
   怪我をして1週間が経った。 シーネを外した私の肘をみて初老の先生は少し迷った様子だったけど、予定通りギプスを巻かれた。 1週間ぶりに見る私の左腕は実に無残で、肘はおろか指先まで腫れて腕全体が一回り以上太くなっていて思わず生唾を飲み込んでしまった。 支えを失った肘からは、再び激痛が襲ってきて思わず顔が歪んでしまう。 「取りあえずギプスを巻くけど安静ににするのは変わらないからね」 「はい」 「2ヶ月位はギプスを巻く事になるけど、状態が落ち着くまでは2週間ごとにギプスの巻き換えね」 腫れが大分残っている私の左腕に巻かれたギプスは大きく無骨で、私の美的感覚とは合わなかったけど、硬く暖かく私の肘を守ってくれる。 2週間経てば腫れも大分引くのは経験上わかっていたから、次の巻替えのときにはもっとスマートでカッコいい見た目になると思う。 ギプスから出ている赤黒く変色した指先はいつかの紗英ちゃんの足指を思い出させ、思わず胸がキュンとしてしまう。 (はぁん、ムズムズしてきちゃった) 欲情と痛みに耐える顔が似ているのかは分からないけど、勘違いした看護士さんが声をかけてきた。 「凄く痛そうだけど大丈夫?座薬入れますか?」 「だっ大丈夫です・・・・それほど痛くは無いですから」 「本当に大丈夫?顔色も悪いし痛そうよ。座薬を使えば大分楽になるけどいいの?」 「・・はい・・・大丈夫です・・ありがとうございます・・」 座薬なんて入れられたらオムツがばれてしまう、それだけは避けなければならない。 「ほんとにもう痛くないですから」 私は絵にかいたような愛想笑いを貼り付け、その場をごまかした。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加