白い開自

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 一夜が明け私と紗英ちゃんは街へ繰り出した。 紗英ちゃんいわく2人の記念日だそうだ。 夕べの紗英ちゃんの行動に私は戸惑い困惑したけど、結局私は紗英ちゃんの全てを受け入れた。 紗英ちゃんは私の全てを受け入れてくれた・・・私もそうしようと思った。 それより私自身が、もう離れることが出来ないくらい紗英ちゃんが好きになっていた。 「由香ちゃん、どこに行きたい?」 「紗英ちゃんに任せる、こんな状態じゃ洋服の試着も出来ないしね」 私は白く拘束された両腕を軽く挙げながらサエちゃんに微笑みかける。 短めのギプスを巻かれた右腕にしがみついて歩く紗英ちゃんが愛おしくて堪らない。 紗英ちゃんも同じ気持ちらしく無邪気に微笑み返してくる。 思えば初めて会った梅雨の季節からまだ残暑が残る蒸し暑い今日まで3ヶ月ほどしか経っていない、それでもその時間は普通の3年に値するほど濃密な気がする。 紗英ちゃんは五分丈の黒のレギンスに紫を基調としたエスニック調のワンピースを着て、足元はアジアンなサンダル。 右足首には大袈裟な医療用のサポーターを嵌めている。 私も紗英ちゃんに合わせてブラウンベースの幾何学模様のワンピースにした。 両腕がギプスだと歩く時に安定性が悪いので足元はアイボリーのローカットスニーカーを選んだ。 ギプスと大げさなサポーターを嵌めた二人組の若い女性は人目を引くようで、移動の電車内や街中で視線をたっぷりと浴び私達のテンションは上がる。 ランチで入った洋食屋で隣に座った紗英ちゃんがパスタを口に運んでくれた時は、周りの視線と自分自身のむず痒い気持ちが混ざり高まって今日一番の幸せを味わえた。 ただショーケースのガラスに映る自分たちの姿を見た時、もしかしたら私のギプスじゃなくて紗英ちゃんの可愛さに皆の視線が集まっているんじゃないかなとも思った。 それくらい紗英ちゃんは、可愛くて魅力的だった。 次はどうしようかと相談しながら歩いていると不意に声をかけられる。 「紗英ちゃん・・由香里ちゃん?」 聞き覚えのあるとても柔らかい声。 振り向くとそこには貴子さんが目を見開いて立っていた。
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