白い開自

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 数分後、私達はカフェで向かいあっていた。 「由香里ちゃん、見違えたわね似合うわよその髪形」 「ありがとうございます」 「でしょ!前より全然イケてると貴子さんも思うでしょ!」 紗英ちゃんが割り込んできて自分の事のように自慢げに話す。 そのテンションの高さに少し戸惑いながらも貴子さんは話を続けた。 「由香里ちゃんその左腕って・・・もしかして自分で?」 視線はさっきから私の左腕のギプスに向けられている。 「・・はい・・でも、紗英ちゃんにも手伝って貰いました」 「・・・そう・・・・」 貴子さんは困ったような視線を紗英ちゃんに一瞬浴びせ、再び話を続ける。 「やっぱりエスカレートしてしまったのね。紗英ちゃんはともかく由香里ちゃんは大丈夫とは思っていたんだけど・・・」 「えっ」 「それで、どの位かかりそうなの?後遺症は大丈夫そう?会社は行ってるの?」 「複雑骨折だし靭帯も切れているので2ヶ月位はこのままみたいです。後遺症とかはまだ分かりません、会社は辞めました」 実は左肘を骨折した3日後に私は会社を辞めた。 何度も長期欠勤をするのが後ろめたかったし、報告に行くにもあの時は激痛でしんどかったのだ。 結局、退職代行業者に頼んで辞表を出してもらった、最近は便利になって助かったとつくづく実感した。 「大丈夫!あたしが由香ちゃんの面倒をみるもん!」 貴子さんはまた困ったような顔をして一呼吸を置く。 「ねえ、2人ともちょっと話を聞いてくれるかしら」 その深刻なトーンに少しだけその場の空気の色が変わった。
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