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「だから私はあのクラブを作って本当に怪我にするのを止めたかったのよ」
「・・・・・・・」
「それでもね・・・それでも・・貴方達のような娘たちが何割かは出てくるのね。大体はギプスやシーネのイミテーションで満足してくれるんだけど」
「だからせめて後遺症が残らない様に綺麗に骨折させてあげていたの」
私はその時初めて貴子さんのちぐはぐな行動の意味を知った。
怪我をさせたり悲しそうな顔をしたり、その度に妹さんを重ねていたんだろう。
その後貴子さんは将来妹さんが生活に困らない為の資金繰りのために、株や資産運用の勉強をしたことや、医療系の専門学校に通ったと話してくれた。
あのマンションの私達が集まる部屋ともう一つ隣の部屋は貴子さんが購入したもので、近々クラブを解散して妹さんと2人で住む予定だという。
実際に骨折させる技術は高額を払ってある人物に徹底的にレクチャーしてもらったらしい、ただこの話しはダークサイドに深く係わる話なので忘れた方がいいと言われた。
「それじゃあ、いくわね。自分の体を大切にしてね」
貴子さんの言葉に私たちは沈黙で答えた。
しかし席を立つ貴子さんを見て、私は咄嗟に立ち上がり深々と頭を下げた。
「ありがとうございました」
自分の声が涙交りなのはそこで初めて気づいた。
何故立ち上がったのか、何故泣いていたのかその時はわからなかった。
ただ貴子さんは私と紗英ちゃんを結び付けてくれた。
私に真っ白な殻と繭の魅力を教えてくれた。
それに感謝したかったんだと思う。
貴子さんはいつもの柔らかい笑みを浮かべて去って行った。
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