白い煩慮

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 「秘密クラブ?」 「みたいなものかしらね」 貴子さんに淹れてもらった紅茶を飲みながら私は問いかけた。 「おじ様たちがマンションの一室に集まって女装をしたりとかって聞いたこと無いかしら?」 「夕方のワイドショーとかで観たかも・・・」 「要するに共通の趣味を持つ人達の集まりって所かしらね。女性専用だけどね」 (細かいことはよく分からなかったけど、こういう事らしい基本的にメンバーは紹介やインターネット等で見つけてくるらしい、私はたまたま目に入ったという事なのかな?) メンバーは予約を入れ、この部屋に集まり各自で好きな格好をする、足にギプスを巻いたり腕に巻いたりだ。 私の腕に嵌っているのはシーネという物でギプスの前段階やそれほどの固定を必要としない時に使う物だと大まかに説明された。 「・・・コスプレみたいな物ですか?」 「ちょっとニュアンスが違うわね。まっその内、由香里ちゃんにも分かるわ」 意味ありげな言い方だったけど、私は腕を固定している包帯をさすりながら、その優しい微笑みから目が離せないでいた。 実際に怪我をしいる訳でもないのに、さっきから私は包帯とシーネで包まれた左腕を動かそうとしていない。 まるで本当に骨折でもしたのかと心が思っているような気がする。 「本当は材料費とか巻いてあげたりする手数料が掛かるんだけど、由香里ちゃんは初回特別サービスってことでいいわよ」 「いいんですか?あっ」 私は素直に喜んでしまい恥ずかしくなって下を向いた。その様子を見た貴子さんはまた微笑む。 「よかったら、またいらっしゃい。私のアドレスを教えておくから」 貴子さんが用意してくれた大きめの紙袋に外したシーネと包帯を入れ、フワフワした気持ちのまままマンションを後にした。 帰宅の最中もさっきまで腕に巻かれていたシーネの感触を反芻し続け、紙袋を持つ手はジンワリと汗で濡れている。 結局、急行で五駅ほど離れた自宅の古いマンションに着くまで私の足は地に着いていなかった。 帰宅後は不器用ながらも再び自分の左腕にシーネを嵌め、食事をしてみたり歯を磨いたりしてその不自由さを大いに楽しんだ。 片腕が不自由な自分の姿を何度も鏡でチェックする、その行為は夜中まで続く。 一人何か危険な遊びをしているような、チクチクとした罪悪感にも似た感覚をたっぷりと身体中に染み込ませて、その夜はそのまま眠りについた。
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