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 寂しい  辛い  寒い  痛い  寒い、寒い、寒い  ねぇ、置いていかないで  一人にしないで 『どうしたの、大丈夫?』  ──は、……あれ? 『嫌な夢でも見てたのかな、随分唸ってたよ』 …………ゆめ、……夢? そっか、夢か……なら、うん、大丈夫。 そうだよね、夢だった。な訳なかった。 『抱っこしよっか。ぎゅーってしてあげるよ?』 いーや、いいよ。遠慮しとく。あ、そんな事より起きたんならご飯にしようよ。僕お腹空いちゃったよ、君ったら突然寝ちゃうんだもの。 ちょ、ちょっと! 遠慮するって言ったのに! むぎゅうぅ…… 『あぁ~~~~ふかふかだねぇ……良いにおーいあったかい』 甘えん坊さんは君の方じゃない。僕はちょこっとくらい夢見が悪くたってヒトと違って引きずらないもの大丈夫なのに。 『そう言えばね、雨が強く降ってきちゃったみたい。今日はもっと寒くなっちゃうね』 あぁ……そっか、雨降ってたの。ってお外もう暗い! 一体どれくらい寝こけてたのさ!  『ご飯宅配しちゃお、ピザでもとっちゃおっかな!』 そうしなさいな、今から動く気なんてないでしょう。 僕には特別メニューのその2をくださいな。映画なんて見ちゃう? 録画してたのが沢山溜まってるよね、怖いやつなら僕がお膝の上に居てあげるからね。  ピザを待つ間に見たい映画をピックアップ。あれも良いな、これもいいなって目移りしながら録画欄をピコピコ行ったり来たり。 あら、決まったの? まーた【虹のカケラ】 もう何回見返してるの、好きだねぇそれ。 女の子が不思議な体験をしながら失っちゃった3日間を取り戻すお話。 まぁ、僕も好きだけどね。 『これ何度見ても好きなんだよねぇ~、ほんと良い話。あ、ピザが到着するまでに準備準備!』  嬉しそうな顔しちゃって、お家の中で転ばないでよね。 まぁ、お家での映画鑑賞会は準備が色々とあるんだもんね。お手軽食べ物でしょ、忘れちゃいけないスナック菓子、飲み物にお手拭き、それに泣きたい時用のバスタオルもね。  僕用のご飯と特別おやつも準備忘れないでよね  ベット周りがあっという間にパーティー仕様に変身。  君ったら、作詞作曲君の【ピザまだかな】と【ピザ楽しみ】の歌を歌って超ご機嫌。  ピンポンとチャイムが鳴るとお財布もってすっ飛んでった。 早! いつもこのくらい機敏なら良いのに。 『ご苦労様です!』  お金を払って、ピザを受け取ってルンルンでお部屋に戻って来た。 『うわ~良い匂い!! じゃ、食べよっか! 頂きます!!』 いただきまーす!  同時に映画もスタート。そうそう、この始まりの音楽良いよねぇ あ、ご飯も特別仕様だ、今日の君はとっても太っ腹! おいしーい! おっと、がっついちゃう所だった。いけない、いけない、優雅にね。  君をちらっと見れば、アチチと言いながら出来たてピザをはふはふ頬張ってチーズをにょーんと伸ばしてる。 『あふっんまっ!!』  って言うかソース口の周りについてるよ!! お行儀よく食べないと!!  わ、垂れちゃうよ! あぁ~言わんこっちゃないんだから 『あ、零れちゃった、へへ』  笑いながらも手の届く距離にタオルがあるから手に取ってふきふき。  まったくもう、本当に君ってば。 ──*──  楽しい時間てあっという間。結局映画を2本見て、もう夜も深い。明日もお休みだから良いけどね。 君も欠伸連発でかなり眠そう。 『うあー眠いぃ……お風呂入らなきゃ……うぅ、動きたくない』 さぁさ、歯を磨いて寝よう、お風呂? お風呂は明日ゆっくり浸かればいいじゃない、一日くらい入らなくたって平気だよ。ま、僕は毛繕いしてから寝るけどね!  歯は磨かなきゃ駄目、虫歯になっちゃうよ! ほらほら、横になっていないで今行かなきゃ! 洗面所はあっちだよ! 仕方ないなぁ、転ばないようについて行ってあげるから。 『わかった、わかったよう、行きます行きます』  よっこら体を起こしてやっと動き出す。  洗面所で歯磨きしっかり10分間。  しっかり磨いて関心関心。   『今日は楽しかったねぇ……明日も、ふわぁ……明日もきっと楽しいね……おや、すみ──』  全部言い終わらない内にすぅすぅ寝息を立て始める君。  うん、楽しかった。僕は君と居るおかげで毎日楽しいけどね。ヒトは働かないと物が買えないって言うんだから仕方ないけど無理はして欲しくないな。 そんなお仕事で君がお外に行っちゃう時間は寂しいけど、でも僕は待てるから大丈夫。ジリツ、してますから。  毛繕いして、お昼寝して、玩具で遊んで、ご飯食べて、日光浴してまたお昼寝して、たまに隣人の相手をしてって結構忙しいしね。  明日も君と一緒、嬉しい。  君の腕の中に潜り込んで鼻をペロリ。頭をぐりぐりこすりつけてからおやすみの姿勢。 はぁ、あったかい。こんな寒い日だってへっちゃら。 雨の音も怖くない。 じゃあ、おやすみ ────  もこんなお天気だった、暗くて雨が酷くて、とてもとても寒かったんだ。吹き付ける風は為す術も無い程に乱暴で、大きな雨粒は小さな兄弟達の体を遠慮なく打ち付けて……。実は覚えているよ、忘れた事なんて一度もない。    君が、抱き上げてくれた腕は僕と同じくらいびしょびしょで冷たかったけれど、温かかった。  どんなに嫌な夢を見たって大丈夫。 だって君が側にいるもの。だから、僕は大丈夫。 大好きな君が居てくれたら、他にはなーんにもいらないんだ  
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