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夕焼け
ふぁ、うっかり寝てたらもうこんな時間?
やれやれそれでは起きますか。
そろそろあの子も帰って来るかな。
暖かかった窓辺がひんやりと冷気を帯びて、より暖かい所に移動するため体を起こして伸びをする。
今日もまったく良い1日だったと、大きく一つ欠伸をしてみれば『ただいまぁ』と鈴の音が転がり込んできた。
本当は駆け寄りたいけど、そんな事はしない。グッと我慢。
あの子が部屋に入って来るのを待つの。草原色のソファーの真ん中で、のんびりのんびりしてたフリ。
見せつけるように欠伸の一つでもしようかな。
あら帰って来たの? おかえりー、くらいがいいかしら。
帰って来た時に、自分からスリスリなんてプライドが許さないからね。
『あーん、ただいまぁ! 今日も頑張ったんだよー! おいでー!! 私を癒して~~』
ほぅら、どーお? こうでなくちゃ。
お部屋に入って来るなり床に敷いてあるフカフカにズベーって。
全く、女の子でしょ!
ぺしんぺしんと自慢の長いで愛の鞭。
『むー、手厳しいなぁーもぉ』
ほら、部屋着になったら存分にもふもふしていいから! 先に着替えるの!
『わかった、わかったぁ。着替えるから』
のそのそ起き上がって、やっとお着替え。
制服脱いで、そうそう。ハンガーにかけてしっかりシワを伸ばしてね。
『これでいかが?』
はい、いいでしょう。合格。
さぁ、もふもふどうぞ。
そろり、と伸びてきた手が頭に柔らかく触れる。
ゆっくり、ゆっくり、右に左に頭を撫でて耳の裏、おでこ、顎をこしょりとしたら背中をひと撫で、それからお尻の付け根をぽんぽん。
あはー、コレコレ。気持ちいい。ついつい喉が嬉しく鳴っちゃうなぁ
ココまで来たら、やっとスリスリしてあげる。
気持ちいいよ、のお返しね。
二人でごろりと横になる。おへそは天井に向けてだらんだらーん。
窓の向こうは朱い色。
ふかふか雲も染まってさ、あぁ、なんて綺麗なんだろうね。
君ったらいつの間にかすぅすぅ寝息。
まだ夜じゃないんだけどな。
まぁ、いっか。もう少し休んだらちゃんと起こしてあげるから。
ひとまず、お帰りなさい。
今日も沢山沢山、頑張ったね。えらい、えらい。
ふわぁ、また眠くなってきたかも。
あぁご褒美だな。
お留守番もちょこっとだけ寂しいんだから、うん。ぼくも本日はよく頑張りました。
──綺麗な夕焼け空と、ほんのり照らされた君の寝顔
あー、幸せ
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