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「――デートって、ドラマの制作発表のことだったんですね」
何処へ行くか知らされていなかった俺は、紫澤の呼んだハイヤーに同乗し、テレビで時折見る芸能人の会見等に使用される格式高い老舗高級ホテルの大広間へと連れて来られていた。
大広間には沢山のカメラ等が所狭しと並んでおり、紫澤から今日の制作発表はマスコミや関係者向けのものだと説明を受ける。
「はは、黙っていてすみません。実はこれから始まる制作発表のドラマ、珍しくウチの会社がスポンサーなんです。父からご挨拶に行ってこいって命を受けたので。それに、ライバルの弱点をこの目で探したいですし」
穏やかな口調でサラリと紫澤は話していたが、最後の一言だけは聞こえるか聞こえないか程度の小声で呟く。
「え……?」
聞き取れなかった俺は思わず聞き返してしまう。
「いや、何でもないです。始まりますよ」
人差し指を自身の口に当てた紫澤がそう話すと、本日の司会を務めるアナウンサーの挨拶が始まった。
そう言えば、足を踏み入れたことの無い場所だったせいか周囲に気を取られて肝心なドラマのタイトルを確認し忘れてしまった……
確か入口に看板が立っていたような。
そう思った瞬間、右手側のドアから上下黒の光沢感あるスーツに黒のシャツ姿の翔琉が颯爽と現れた。
次いで華やかな顔に負けないインパクトのある真紅のカクテルドレスに身を纏った姫宮華。
最後に、翔琉とお揃いであるスーツ姿の飛海とドラマの監督である30代半ば頃に見える男性監督が登場した。
……えっと、もしかしてこれって噂の翔琉が主役の新ドラマの制作発表?!
翔琉、めちゃくちゃ格好良いんですけれど!!
翔琉に釘付けとなった俺は、姫宮華との過去の噂をすっかり忘れ、強引過ぎる紫澤の誘いに乗って心から良かったと思ったのだった。
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