雑踏を越えて。

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 茜と離婚係争中の夫、鳥嶋啓二はうきうきと、探偵前橋圭吾――密には桜田健一郎と名乗っていた――からの報告を受けていた。 「客の男性である京島密と密会の約束があるようです」 前橋は、2人の間のテーブルに、明らかに盗撮されたであろう密と茜の写真を広げた。 「この二人は、一線を越えているのか」 「まだですが、2人で一緒に行動していれば、いくらでもチャンスはあります」 「つまり?」 「2人を薬で眠らせてホテルに連れ込んで、服を脱がして一緒に寝かせておけば既成事実を作れますから」 「それでいこう。とにかく、あの女には一円たりとも払わせないでくれ」 「畏まりました。では、準備のために失礼します」 前橋はテーブルの上に広げた資料を纏めてバッグに収め、人目につかないように裏口から家を出たのだが…。
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