砂の男

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 夜勤明けの、独特な身体の渇き。細胞から水分を抜かれるような、根源的な渇きである。  明け方。ポストに投函された朝刊を渡しに報道記者を起こしにいく頃、身体が徐々にその乾きに蝕まれていくのがわかる。湿度を上げても、水を飲んでも、簡単には補充されない、あとはただ泥のように眠り、細胞が息を吹きかえしてくれるのを待つしか道はないような、内側からの渇き。  僕はこの"渇き"を、ずいぶん幼い頃に経験したことがある。
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