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宇宙神見つけた
東雲ヤコを巡る騒動、闇のゴールデンウィークと呼ばれる事件は無事に終結し、勘解由小路莉里は、奥多摩の森を出て家路を目指していた。
「護田さんも戻ってきたし、何もかも元通りで良かったのよさ。思えば莉里の可愛い涙が全てを祓い清めたのよさ。川峰さんも父峰さんも故郷に錦飾れて良かったのよさ」
「いかさまでございます姫様。姫様の御稜威は遍く日本の森におわしますれば。この父峰、全身全霊をもって姫様にお仕えいたします」
「ちょっと臭うけどこい。お腹ワシワシしてやるのよさ。川峰さんも来るのよさ」
ウワーイ。というような気分で死骸のコツメカワウソと息子のニホンカワウソは莉里にじゃれついた。
コツメカワウソの死骸に取り憑き魂が定着したのは父親の勘解由小路の力だった。
リビングデッドなコツメカワウソは、何が何でも莉里の為に存在しようとし、その使命感は口から腐臭を発するレベルで高まっていたのだった。
「ああ?ちょっと!護田さん止めるのよさ!」
車は急停車し、莉里は車の外に飛び出した。
長閑な山道があった。緑に苔生した道祖神の横に、それはいた。
莉里は、道祖神の横で座り、雑草を食っていたお爺ちゃんを発見したのだった。
「何か見つけちゃったのよさ。お爺ちゃん、何を食べてるのよさ?」
お爺ちゃんは、見事なスーツの上着に革靴を履く凄まじい威厳を発した老人だったが、
ズボンを履いておらず、ダルダルのブリーフは、失禁の跡の染みがついていた。
「見るも不快な老人でございますね姫様」
「あんたが言うな。死骸の分際で。お爺ちゃん、名前解るのよさ?どこから来たのよさ?」
「何とも愛い娘であるな。儂が誰かと?かしこくも神界に君臨する宇宙神である」
あー。みんなの声が一致した。自称宇宙神は、物凄い存在感を放っていた。
「それで、どこから来たのよさ?」
「うむ。ここはどこか?」
迷子の宇宙神を、冥界の神ハデスの娘が拾ったという。
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