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ピッと、裾を引っ張られる感じがして、意識が急降下した。
高い所から急に低い所に行った様で、苦しい。
「行っちゃだめ。」
驚いて見遣れば、小さな女の子がこちらを涙目で見上げている。
ユリだ。
父親が此処ではない何処かに行ってしまうと思ったのか、両手でスーツの裾を目一杯引っ張っている。
「な、べ、別に行きません、よ…」
「ふえぇ…」
クラインは一応返答したが、ユリは裾を更に引っ張る。
…仕方ない。
いよいよ泣き出し始めたユリを抱き上げ、ツタの瀧から離れる事にした。
(まさか、水辺以外で引き込まれるとは。)
今になって、体が深と冷えてきた。
寒い。
此処は確かに極寒たる帝国メガロポリスだが、夏なのに寒い。
気色悪いぐらい流れる冷汗と共に、速やかに、さささっと。
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